人文蝉

  大人のためのアニメ・人文学サークル (社会人・院生からのオトナ部活)

第1回の報告

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一言:暑いか雨降るかで修学旅行生が不憫(´・ω・)流麗な文章はいいぞ。

場所:京都・平安神宮岡崎公園内喫茶店

時間:11時半頃から13時半まで

天気:快晴、真夏日

話題リスト:

・現代の苦しみに仏教が効くか否か

 (横浜・31歳女逮捕「恋愛うまくいかず」放火事件を受けて)

ちはやふるにおける青春、俺ガイルと宗教

京都賞

・アニメ趣味と宗教性

第一次産業を離れた人間の抱える「不安」とアニメ

・文章に現れる知性:三島由紀夫空海 ※以下、続きに当該文章を引用

 

 

三島由紀夫について

饗庭孝男「末期の眼 -近代日本文学における終末論的思考」山本和 編(1975)『終末論ーその起源・構造・展開ー』 創文社, 35-38頁

***以下引用***

  すでに『十五歳詩集』のなかで、

 「わたくし夕な夕な
  窓に立ち椿事を待った」

 とうたった三島は、戦争の終末によって、時代と歴史にのみ「終末」があり、自己にはそれが訪れなかった消えぬ悔恨をロマン主義的発想の中で文学作品と行為のなかに示してゆこうとしたのである。...

「一体自分はいかなる日、いかなる時代のために生まれたのか、と私は考える。私の運命は、私が生きのび、やがて老い、波瀾のない日々のうちにたゆみなく仕事をつづけることを命じた。自分の胸の裡には、なお癒やされぬ浪漫的な魂、白く羽搏くものが時折感じられる。それと同時に、たえず若いアイロニーが私の心を噛んでいる。」(「私の文学」)
だが、この挫折感の奥深く「終末」への待望がひそんでいることはたしかである。...

 とりわけ「夕焼」のイメージと「滅亡」のイメージはその最たるものである。彼は、最後の作品『豊饒の海』の第三巻「暁の寺」のなかで、「すべての芸術は夕焼ですね」と書き、「芸術といふものは巨大な夕焼です。一時代のすべての佳いものの燔祭です。さしも永いあひだつづいた白昼の理性も、夕焼のあの無意味な色彩の濫費によつて台無しにされ、永久につづくかと思はれた歴史も、突然自分の終末に気づかされる」とのべ、「あの夕焼の花やかさ、夕焼雲のきちがひじみた奔逸を見ては、『よりよい未来』などといふたはごとも忽ち色褪せてしまひます」と書き、さらに「何がはじまつたか?何もはじまりはしない。ただ、終るだけです」「芸術はそれぞれの時代の最大の終末観を、何者よりも早く予見し、準備し、身を以つて実現します」とのべている...

暁の寺―豊饒の海・第三巻 (新潮文庫)

暁の寺―豊饒の海・第三巻 (新潮文庫)

 

 

空海について

「秘蔵宝鑰 序文」『空海コレクション1』宮坂宥勝 監修

空海コレクション 1 (ちくま学芸文庫)

空海コレクション 1 (ちくま学芸文庫)

 

 ***以下引用***

悠々たり悠々たり太だ悠々たり
(ゆうゆうたりゆうゆうたりはなはだゆうゆうたり)
内外の縑緗千万の軸あり
(ないげのけんしょうせんまんのじくあり)
杳々たり杳々たり 甚だ杳々たり
(ようようたりようようたりはなはだようようたり)
道を云ひ道を云ふに百種の道あり
(みちをいいみちをいうにひゃくしゅのみちあり)
書死へ諷死へなましかば本何んが為さん
(しょたえふうたえなましかばもといかんがなさん)
知らじ知らじ吾も知らじ・・・・・
(しらじしらじわれもしらじ)
思ひ思ひ思ひ思うとも聖も心ること無けん
(おもいおもいおもいおもうともしょうもしることなけん)
牛頭 草を嘗めて病者を悲しみ
(ぎゅうとう くさをなめてびょうしゃをかなしみ)
断菑 車を機って迷方を愍れむ
(だんし くるまをあやつってめいほうをあわれむ)
三界の狂人は狂せることを知らず
(さんがいのきょうじんはきょうせることをしらず)
四生の盲者は盲なることを識らず
(ししょうのもうじゃはもうなることをさとらず)
生れ生れ生れ生れて生の始に暗く
(うまれうまれうまれうまれて しょうのはじめにくらく)
死に死に死に死んで死の終に冥し
(しにしにしにしんで しのおわりにくらし)

限りなく限りなく、きわめて限りないことよ、ああ
仏典と仏典以外の書物とは千万巻もある
広く深く広く深くして、きわめて広く深いことよ、ああ
さまざまな道を説くのに百種の道がある
それらを書くこともなく暗記することもなければ、教えの根本をどうして伝えることができようか
もしも、そうしなければ、誰ひとりとして教えを知る者もなく、もちろん、わたしもそれを知らないであろう・・・・・・
どんな教えのことを考えてみても、たとえ聖者だって、それを知ることはないであろう
神農氏は病める者をあわれんで草木をなめてみて薬草をつくった
周公旦は方角の分からぬ者に指南車をつかって教えてやった
迷いの世界の狂えるひとは狂っていることを知らない
眼の見えない者にもひとしい生きとし生けるものは、自分が眼の見えない者であることに気づかない
われわれは生まれ生まれ生まれ生まれて生のはじめに暗く
死に死に死に死んで死の終わりに冥い

密教世界の構造 空海「秘蔵宝鑰」 (ちくま学芸文庫)

密教世界の構造 空海「秘蔵宝鑰」 (ちくま学芸文庫)